「あ。オレ、覚えてる? あのコンパん時、萌香チャンの前に座ってたんだけど」


「うん。優一君だよね」


優一君はあたしの答えに満足したのかニコニコ笑っている。


「つか、どうしたの? なんでここにいんの?」


「えっと……あの……」


どうしよう。

言い訳が何も思い浮かばないよ。

代わりに口を開いたのは優一君の方だった。


「あ、卓巳でしょ? 卓巳に用事でしょ?」


「え……」


「卓巳ならまだ研究室にいるよ。今日は泊まりらしいし」


「あ……それじゃ、別にいいの。あの……これっ」


あたしは優一君から卓巳君に渡してもらおうと、持っていた紙袋を差し出そうとした。


だけど、そんなあたしの腕を優一君はぐいぐい引っ張る。


「卓巳の研究室まで連れていってやるよ」


「ええっ」