――来てみたものの……。


どうしよう。


あたしは卓巳君の大学の正門前で立ちすくんでいた。


いきなり訪ねてくるなんて迷惑かもしれない……。

おまけに、勝手に差し入れまで持ってきちゃって。


でも……卓巳君、お腹空かせてるかもしれないもんね。


差し入れだけ渡したらサッと帰ればいいんだし。


よぉしっ。

ここは頑張らなきゃ。


あたしはポケットから携帯を取り出して、メモリから卓巳君の番号を表示させた。


そして、大きく息を吸い込んだ。

後はボタンを押すだけ。


なのに……。


なのに……。


指が動かないよぉおおお。


ダメだ。

なんて意気地なしなんだろう……。


やっぱ無理だ。

ため息が白く宙を彷徨う。

ガックリと肩を落として、立ち去ろうとしたその時……。



「あれ……ひょっとして……萌香チャン?」


その声にビクンと体を震わせて振り返ってみると……



そこに立っていたのは赤茶色の髪をした男の子だった。