「はぁ……ヤベ。オレ…ヤベ…」


卓巳君は大きく息を吐き出すと、さっきより体重をかけてあたしを抱きしめた。




「何がヤバイの?」


あたしはクスクス笑う。


「……色々とね」そう言って、ふにゃぁと力を抜くとあたしの胸に顔を埋めた。


そんな彼の髪をクシュクシュと撫でながら思う。


あたし達の関係って、世間では“セフレ”って言うんだろうな。


あたしたちは外で待ち合わせして逢うことようなことはない。

普通のカップルがするようなデートもしたことない。

会うのはいつも彼の部屋。


彼から連絡を受けて、あたしは彼に抱かれに行く。


卓巳君は何を思ってあたしを抱くの?


「好き」とか「つきあって」とか、そんな言葉は言ってもらえない。

だからあたしも言わないし訊けない。


この気持ちに気づかれることが怖い。

“好き”だなんて知られたら、どうなるのかな。


“重い”って迷惑がられて、もう会ってもらえなくなるのかな。


卓巳君にとってあたしはやりたいときにやってくる都合のいい女でしかないんだもん。


自分の立場はちゃんとわかってる。

だからこの気持ちに蓋をして隠してしまおう。


そしたら、ずっと側に置いてもらえる?


このままでいられる?