不機嫌でかつスイートなカラダ


ぎゃははははははー!

みんなの笑い声が居酒屋の店内に響き渡る。


友達の沙耶(サヤ)に誘われた合コン。


お酒のせいだかなんだか、さっきからあたし達のいるテーブルは異様な雰囲気で盛り上がっていた。

といっても、周りの客も忘年会シーズンのせいか、かなり賑わっている集団ばかり。

あたし達だけが特別に目立っているわけでもなさそう。



どういう経緯か忘れたけど、あたし達は自分のエッチ体験を順番に語るはめになってしまったのだ。


そして、今はあたしの番。



「痛い……って、萌香(モエカ)ちゃんて、まさかの処女?」


あたしの真ん前に座っている、赤茶髪の男の子があたしを指差す。


「違う」


じゃー、なんで? って感じでみんなが見つめる。


やっぱり初めてでもないのに、痛いのは変なのかなぁ……。


あたしはふーと大きくため息をついた。


「笑い事じゃないんだから……。これ……真剣に悩んでるんだよぉ」


そう。

最近では自分の体はどこかおかしくて、病気なんじゃないか……とさえ思っているのだ。

あたしはずばり……


――エッチが嫌いだ。



全然気持ちよくなんてない。

首筋や胸や太もも……どこを触られても、なんだかくすぐったいだけ。

でも感じなきゃ彼氏に悪い気がして、演技で無理やりエッチな声をそれっぽく出してみたりしてる。

そんな自分を冷静に見ているうちに、さらに冷めてしまって……。

いざという時には、もう体はガチガチ。

あたしの心も体も……何も準備できていない状態。


――で、行き着く先は痛みだけなのだ。


いつも『早く終わって欲しい……』なんてそんなこと思いながら苦痛に耐えるあたし。

あたしも辛いけど、そんなあたしの上で必死で頑張っている彼氏がなんだか気の毒にさえ思ってくる。



「それって……不感症ってやつ?」