え?

なんで?


「卓巳君?」


《ああ、うん。今優一といんだけど、電話替わってもらったんだ。オレの声、すぐわかった?》


わかるよ……。

低くて優しい声。

昨日、何度もあたしの耳元で甘く囁いてくれた声。


やだ……顔が熱くなる。

もう二度と関わることなんてないって思ってたのに、声が聞けただけでもすごくうれしいよ。



《……萌香チャン?》


「あっ、あっ、ごめんなさいっ!」


あたしったら、ボーっとしちゃってた。


《クスッ……なんで謝ってんの?》


「え? そうだよね……なんかごめんなさいっ……あ…あれ?」


ああああああ。

もうやだぁああああ。

電話の向こうでは押し殺したような笑い声が聞こえる。

――ああ、最悪……。

絶対、アホな女だって思われてるよぉ……。


落ち着けあたしっ!

心臓うるさいっ。

指先は緊張で冷たくなってるし、意味不明なことばっか言ってるし……。

もぉ、自分で自分が嫌になるよぉ。



《萌香チャン、今日会えない?》


「えっ……」