あ……。

卓巳君のそのセリフ、どこかで聞いたことある。


そうだ。

あれは、たしか卓巳君の研究室で。

卓巳君の席の周りにいた女の子達に同じようなことを言っていた。

あれはひょっとしてこのことを喋っていただけなの?

なんて考えているあたしの目の前に卓巳君が舌を出して見せた。


「あ……」


あたしはそれを見て絶句する。

だけど、次の瞬間には叫んでいた。


「すごい! すごい!」


アポロチョコは、本当にきれいに二つに分かれていた。

ピンク色した苺の部分と、茶色いチョコの部分に。


「うそぉ……すごい」


「だろ?」


卓巳君は、満足げにフフンと鼻で笑う。

まるで芸をした後に「誉めて! 誉めて!」って期待しながら尻尾振ってる子犬みたい。

そんな顔見てたら、自然と頬が緩んじゃう。


「ご褒美あげなきゃ……」


そう呟いてみたけど、卓巳君には聞こえなかったみたい。


「ん?」って首を傾げてる。


あたしはもう一粒チョコを取り出すと、「あーん」なんて言って、また卓巳君の口の中に入れた。


「何? またやって欲しいの?」


不思議そうにキョトンとする卓巳君。

その顔に胸がキュンとなる。

愛しくて、愛しくて……母性に近いような感情が湧き出てくる。


「可愛いっ」


「へ? うわっ 萌香……」