あたしはベッドから降りると壁にかけてあったコートの方へ向かう。


ポケットを探ると、中にあったものを手にして、またベッドに戻った。

そして卓巳君の目の前に差し出す。


「あ……アポロチョコ」


「うん。今日、商店街でもらったんだ。これで良かったら食べる?」


あたしはビニールの包みを外して、箱を開けた。


「はい。あーんして?」


一粒取り出して卓巳君の口に入れる。


なぜかそこで、卓巳君は何かを思いついたような顔をした。


「そうだ。オレ、すげぇことできるんだ」


「すごいこと?」


「ああ。アポロチョコのさ。苺の部分とチョコの部分があんだろ? あれを口の中できれいに分けることができるんだ」


「ええ~。まさかぁ……信じられない」


「マジだって。よくさ、サクランボのへたを舌で結べたらキスが上手いなんて言うじゃん? アポロチョコを分けられるオレの方がよっぽどすげぇって思わない?」


「ええ~? もう、わけわかんない」


あたしはクスクス笑う。


「だいたい、どうやってするの?」


「だから……舌で感じるんだ。苺味とチョコ味の微妙な違いをさ。で、ここだ……って思ったところを歯でガリッと」


「ほんとかなぁ? なんか信じらんなーい」


あたしはわざと挑発するようにそう言った。

当然、卓巳君はムキになる。


「マジだって! なら、試してみようか? オレの舌のテクニック、ハンパないって」