駅から卓巳君のマンションまで、あたし達はずっと手を繋いでいた。
もう少しも離れたくなくて、あたしが指を絡ませると、卓巳君もそれに応えてギュッと握り返してくれる。
あたし達は歩きながら色んな話をした。
「あたしね。卓巳君は和美さんと付き合ってるって誤解してたの」
「へ? オレと和美が? なんで?」
「前に映画の試写会の日に、偶然、二人が一緒にいるところ見ちゃったんだ。駅前の雑貨屋さんに入っていくところ。 試写会に行けなかったのは、和美さんと会うためだったんだなぁ……って勝手に落ち込んでた」
「ああ……あれ? あの日は劇の練習があったんだ。オレ、サボってばっかだったからさ、みんなキレまくり」
卓巳君はふふんと鼻で笑った。
「サボってた」……とか言うわりに、ちっとも反省なんてしてなさそう。
そういうところ、卓巳君らしいと言えば、卓巳君らしい。
「さすがにまずいな……って思って、練習に参加したの。和美と一緒にいたのは、劇で使う小道具の買出しに付き合ってたからだよ。あいつ、なんでもこだわる方でさ。わざわざアンティークショップで色々探してたんだよ。和美って、変わりもんなんだよな、実家金持ちのくせに、バイトなんかしてるし……」
「そうだったんだ……」
「そうだよ。オレだって、ほんとは萌香と映画観たかった」
“萌香”
さりげなく呼び捨てにされて、あたしの胸はキュンと音を立てた。
今までも、卓巳君はあたしを抱く時にそう呼ぶ事はあっても、普段はなぜか「萌香チャン」だったから。
そんな些細な変化がうれしくて、あたしの頬は緩む。
あたしの様子に気付いた卓巳君は、「ん?」と首を傾げるんだけど、あたしは「ううん、なんでもない」って呟いて、卓巳君の指を握る手にキュっと力を入れた。
――あたし達、つきあってるんだね。
なんて、改めて実感する。
「ねぇ、卓巳君」
「ん?」
「さっきの……あれ、本気?」
もう少しも離れたくなくて、あたしが指を絡ませると、卓巳君もそれに応えてギュッと握り返してくれる。
あたし達は歩きながら色んな話をした。
「あたしね。卓巳君は和美さんと付き合ってるって誤解してたの」
「へ? オレと和美が? なんで?」
「前に映画の試写会の日に、偶然、二人が一緒にいるところ見ちゃったんだ。駅前の雑貨屋さんに入っていくところ。 試写会に行けなかったのは、和美さんと会うためだったんだなぁ……って勝手に落ち込んでた」
「ああ……あれ? あの日は劇の練習があったんだ。オレ、サボってばっかだったからさ、みんなキレまくり」
卓巳君はふふんと鼻で笑った。
「サボってた」……とか言うわりに、ちっとも反省なんてしてなさそう。
そういうところ、卓巳君らしいと言えば、卓巳君らしい。
「さすがにまずいな……って思って、練習に参加したの。和美と一緒にいたのは、劇で使う小道具の買出しに付き合ってたからだよ。あいつ、なんでもこだわる方でさ。わざわざアンティークショップで色々探してたんだよ。和美って、変わりもんなんだよな、実家金持ちのくせに、バイトなんかしてるし……」
「そうだったんだ……」
「そうだよ。オレだって、ほんとは萌香と映画観たかった」
“萌香”
さりげなく呼び捨てにされて、あたしの胸はキュンと音を立てた。
今までも、卓巳君はあたしを抱く時にそう呼ぶ事はあっても、普段はなぜか「萌香チャン」だったから。
そんな些細な変化がうれしくて、あたしの頬は緩む。
あたしの様子に気付いた卓巳君は、「ん?」と首を傾げるんだけど、あたしは「ううん、なんでもない」って呟いて、卓巳君の指を握る手にキュっと力を入れた。
――あたし達、つきあってるんだね。
なんて、改めて実感する。
「ねぇ、卓巳君」
「ん?」
「さっきの……あれ、本気?」

