その後、なんとか無理やり劇は続行された。

ラストシーンで王子は毒ヘビにかまれ、その命を絶つことで、花が待っている小さな星に帰っていく……という切ない終わり方だというのに。

卓巳君てば、始終ニコニコしっぱなしで、劇はある意味大失敗に終わった。


「去年のマジックショーの悲劇がまた……。あたし達、呪われてるの?」


和美さんは顔面蒼白でブツブツ呟いていた。


「観客みんな、喜んでたんだからいいんじゃね?」……なんて、劇を台無しにした張本人は悪びれる様子もなくケラケラ笑ってた。




そして……


「萌香チャン! おまたせ」


廊下で卓巳君の着替えを待っていると、やがて彼が現れた。


「髪……まだ金色なんだね」


「ああ。これはうち帰ってから落とすよ」


「そっか。じゃ、もう帰ろうか」


そう言ったあたしの目を卓巳君はじっと見つめる。


そして腕を伸ばしてあたしを引き寄せるとそのまま抱きしめた。




「やべ……帰したくない」