突然のことに驚いて、腕から逃れようとするあたしに優一君は耳打ちする。


「しっ……。卓巳の気持ち知りたいんでしょ? だったらこのまま会話続けよう」


「え……。うん……」


なんだかよくわからないけど、あたしはまだ不安に思っていることを尋ねた。


「卓巳君てあたしとのことみんなに言いふらしたの? その……出会ったその日に……って。さっき、金髪の男の子がそう言ってたの。『合コンで女持ち帰って、ヤった』って自慢してたって……」


「へ?」


優一君は目を丸くして驚く。


「それは誤解だよ」


「誤解……?」


「そ。卓巳はさぁ……確かに萌香チャンのことをみんなに自慢してたけど、あれは単なるノロケだったよ」


優一君は、あたしの耳元に唇を寄せてそう囁くと、なぜか一瞬ステージの方へニヤリと笑って視線を送った。

相変わらず腕はあたしの肩をしっかりと掴んだままだ。



《ボッ……》


その時、またステージでは卓巳君のセリフが止まってしまった。


《ボクの星はぁ! 今日、ちょうど真上にやってくるんだッ!》


卓巳君……?

なんとかセリフを続けてはいるものの、なんかヤケになっているって感じ。

もう完全に棒読み状態。

気のせいか、チラチラこちらを見ているような気がする。



「あー。もう台無し」


和美さんはうなだれてガシガシと頭を掻いている。

一方、優一君はクスクス笑いながら、さらに腕に力を入れてあたしを引き寄せる。

まるでステージに向かって、挑発するような笑みを浮かべて。


「卓巳が言ってたのはね……『合コンでめちゃくちゃ可愛い子、ゲットした』ってさ。あの合コンの後、しばらく嬉しそうに誰彼構わず自慢してた。おまけにあいつ、卒研が手に付かないぐらい萌香チャンのことで頭いっぱいだったし。だから研究進まなかったんだよ」


「ええっ……」