不機嫌でかつスイートなカラダ

「あいつさぁ……。余裕かましまくり。何も言わなくても萌香チャンには通じてるはずだ。萌香チャンはそういうのわかってくれる子だって思いこんでたみたい。オレ達はちゃんと心で通じ合ってる……とか真顔で言ってやがんの」


「そんなぁ……。ちゃんと言ってくれなきゃ、わかんないよ……」


「だよなぁ……だから、アイツはアホなの。可哀相に、萌香チャン」


そう言って、優一君はあたしの頭をポンポンと撫でた。


《ボク……》


その瞬間、なぜかそこで卓巳君のセリフが途切れてしまった。

あたし達はステージに注目する。

いつまでもセリフを言わない卓巳君に、ステージ上も観客も息をのむ。


《うちに帰るっ ウ・チ・ニ・カ・エ・ルだろ!》


慌てて、パイロット役の人が小声で卓巳君に伝えようとするが、マイクがその声を拾ってホールに響き渡っている。


観客がクスクスと笑い出す。


《ボク、今日、うちに帰るよ》


卓巳君は慌ててセリフを続けた。



「ぷはっ。アイツ、マジおもしれー」


優一君が堪えきれずまた吹き出した。


和美さんは、首を振ってため息をついている。



「でも……やっぱり自信ないよ」


あたしは小さく呟いた。


「だって、卓巳君、そんな素振り、少しも見せてくれないんだもん。愛されてるなんて自信ない……」


「んー……」


少し考え込んでいた優一君は、ふいにあたしの肩に手を回した。


「じゃ、試してみよっか?」


「え? 何……?」