不機嫌でかつスイートなカラダ

「相当、愛されてるよ。萌香チャン」


「えぇ?」


驚いたあたしは、思わず優一君の顔をまじまじと眺めてしまった。


「アイツ、かなりへこんでたもん」


「えっ……」


「萌香チャンが、合コン行くって聞いて」


「ええっ……。そうだったの?」


「ショックもショック……」


優一君はわざとらしく目をこすって泣きまねをする。


「『彼女だと思ってたのはオレだけだったのかな。オレ一人でうぬぼれてたのかな』って、相当落ち込んでたよ」


「ええっ……彼女ぉ?」


思わずすっとんきょうな奇声を発してしまったあたしに、みんなの視線が集まる。


「すみません」と小声で呟いてペコリと頭を下げたあたしは、声のトーンを下げて優一君に質問した。


「卓巳君はあたしのことを“彼女”だと思ってたの?」


「そのつもりだったみたいだよ?」


「そんな……」


そんなのわかんないよ。


「だって、卓巳君、何も言ってくれないんだもん。『好き』とか『付き合って』とか、一言も言ってくれなかったんだよ? それなのに彼女だなんて……」


「だからアイツはアホだっつの」


その時、ステージにいる卓巳君のセリフがあたしの耳に届いた。


《肝心なことは目に見えないんだ……心で見るもんなんだよ》



と同時に優一君がプッ……と吹き出した。


さっき合コンで言ってた。

卓巳君の最近の口癖だって……。


『肝心な事は目に見えない。心で見るもんだ』


これも劇の中のセリフだったんだ。