不機嫌でかつスイートなカラダ

「卓巳ったら、ただでさえ卒研で忙しいのにさ、少しでも時間が空いたら、すぐ萌香さんと会っちゃうんだもん。おかげで、劇の練習もサボりまくり……」


「ええっ」


そうだったんだ……。

卓巳君、いつも疲れてたみたいだけど、それって卒研だけでなく、劇の練習もあったからだったんだ。

その上、その練習をサボってまであたしとも会ってくれてたんだね……。


「でも、それならそうと、言ってくれれば良かったのに……」


「恥ずかしかったんじゃない? ボランティアなんて柄じゃねぇ…っていつも言ってるし。今回もさ、萌香さんにも観に来てもらえば?って、何回も言ったんだけどね……。『んなの、萌香チャンには見せられねぇ』だってさ」


「えっ……。じゃ、あたし、ここにいちゃまずいんじゃ……」


「いいって、いいって。これはバツなの。」


和美さんは人差し指を立ててニヤリと微笑んだ。


「リハーサル抜け出して、みんなに心配かけたバツ。あたしを怒らせたらどうなるかって見せしめ」


妖しい笑みを浮かべる和美さんを見て、あたしは思わず本音が出てしまうのだった。


「和美さん……なんかキャラが違う……」


慌てて口元を覆う。


「いやあの……キャラっていうか何ていうか…」


しどろもどろなあたしに、和美さんはクスリと笑った。


「あはは、お店でのこと言ってんの? あんなの営業用に決まってんじゃん。萌香さんて、ほんと卓巳の言ってた通りの子なんだね」


「えっ? 卓巳君、あたしのこと何て言ってたんですか?」


「すごく純粋で人を疑うことを知らないって。あんなんじゃすぐに騙されてしまうんじゃないかって。でも、そういうとこがあぶなっかしくて、ほっとけないんだってさ」


「そっ……そんなこと言ってたんですか……」


かぁって顔が熱くなる……。

卓巳君、そんな風にあたしのこと思ってくれてたんだ。