「それで? それで?」


沙耶はますます目をキラキラさせて身を乗り出してくる。


「ダメ……これ以上は無理」


とてもじゃないけど、恥ずかしくて言えない。


あの後のことは、自分でも信じられなかった。

お酒のせい?

それとも……熱いお風呂のせい?


火照ったあたしの体は彼が触れるたびにさらに熱を帯びるばかりで。


白い湯気に満たされたバスルームは、視界も意識もぼんやりさせてくれて、まるで夢の中にいるような気分だった。

そんな中で、チャプチャプとお湯の跳ねる音と、今まで聞いたことのないようなあたしの甘い声が響いていた。

フワフワの泡に包まれたあたしの体を、頭のてっぺんから足の指の先まで、まるで壊れ物みたいに大事に扱ってくれた。



あんな風に優しく抱かれたのは初めてで……


思い返すと体の芯がキュッとなって……


ざわざわと胸が落ち着かなくなるこの感情をなんと呼ぶのか……


そのことにあたしが気づくのはもうちょっと後のことだった。