その場所をあたしが理解すると同時に、正面玄関前に車は停車した。


山川さんがサッと車から降りると、後部座席のドアを開けてくれた。


「どうぞ」


一瞬不安になって振り返ると、卓巳君が無理に作ったような笑顔を見せて、頷いてくれた。


あたしは車から外に出た。

続いて卓巳君も。



玄関ドアのすぐ横の壁に掛かったプレートの文字が目に入った。


【姫川総合病院】

――ヒメカワ……病院。


そう。

ここは病院だった。

たしか3年ほど前にできたばかりの病院だ。

最新の医療設備が整っているとの評判を聞いたことがあった。


あたしはハッとして振り返る。


ずっと違和感のあった卓巳君の服装。


ハーフコートを着ているから、コートの中がどんな服装なのかはわからないけど……。

コートの裾から出ているパンツは、明らかに普段卓巳君が着ているようなものではない。


薄黄緑の、この季節に履くには不釣合いなほどの薄い生地。

かなりゆったりめで、パジャマのようにも見える。

そう。

卓巳君の服装は、まるで入院患者がコートだけ羽織って外に出たような……そんな感じなのだ。

ひょっとして卓巳君はこの病院に入院していたのかな?

でもなんで?

どこか悪いの?