不機嫌でかつスイートなカラダ

どうしよう……。

こんなところを、よりによって和美さんに見られちゃうなんて。

こういうの修羅場って言うんじゃないの?

まさに浮気現場を押さえられた……そんな瞬間だった。



「お嬢様!」


――お嬢様?

見ると、和美さんの後を追って、スーツ姿の男性が近づいてくる。

年齢は30歳前後かな。

空手とか柔道とか……格闘系のスポーツでもやっていそうなほど、体格が良い。


「山川、車に彼を乗せなさい」


山川と呼ばれたスーツ姿の男性は、「はっ」と短く応えると、卓巳君を抱えるようにして立ち上がらせる。


一方あたしは完全に腰を抜かしてしまって、立ち上がることもできない。


そんなあたしを見下ろして卓巳君は力なく呟いた。


「ごめん、萌香チャン……。もうホントにタイムリミットだ」


山川さんはそんな卓巳君を促して、車の中に押し込んだ。


何?

何が起こっているの?


呆然とするあたしの腕を和美さんが掴み、そのままあたしを立ち上がらせる。


「和美さん……あの……あたし……」


思考がまとまらない。

謝らなきゃいけないんだよね……。

でも、そんなことで許されるの?

あたしの体も声も震えてる。


何もできないでいるあたしに、和美さんは妖艶ともとれる笑顔でにっこり微笑んだ。



「こんばんは。萌香さん」



「え……」