「王子様、やっとご帰還かよ~。来るのおせーよ!」


背後からそんな声がして振り返ると、優一君が近づいてきていた。

そしてポンポンと卓巳君の肩を叩く。

それで冷静さを取り戻したのか、卓巳君は金髪の彼の胸元からパッと手を離した。


卓巳君と入れ替わるように、今度は優一君が金髪の彼の顔を覗き込む。


「お前、悪い酔いしすぎだっつの」


そしてあたしの方を見上げ、申し訳なさそうに言う。


「萌香チャン、ごめんね。怖かったろ? こいつ、悪いヤツじゃねぇんだけど……。酒入るとヤバくてね。見境なく女にセクハラすんだよ。オレからも一発」


ポカンと金髪頭を叩くと、「ほらっ行くぞ」そう言って彼の腕を掴んで立ち上がらせる。


「んじゃ、オレこいつ連れて店戻るわ。……後は二人でごゆっくりどうぞ」


ニヤリと笑顔を向けると、金髪の彼を抱きかかえるようにして、優一君は立ち去っていった。




「萌香チャン……大丈夫だった?」


卓巳君のその声にあたしの体はビクンと震えた。


「うん……。でもなんでここに……?」


和美さんと一緒だったんじゃないの?

色んな疑問を抱えながら、じっと見つめると、卓巳君はなぜかあたしから顔をそらした。


「いや……なんつーか。なんか気になって。とりあえず来てみたものの、場所わかんねぇし焦った。携帯通じねぇから店に電話して、優一から場所聞いて走って……かけつけて……」


「卓巳君……」


ううん。

聞きたいのはそうじゃなくて……。

どうしてここにいるの?

なんであたしを助けたの?

その理由が知りたいのに、卓巳君はふいにあたしと目を合わせると「ハハッ」と小さく笑った。


「オレ……色々うぬぼれてたのかな」


「え?」