不機嫌でかつスイートなカラダ

「やめて……」


もう……ヤダ。

やっぱり合コンなんて来るんじゃなかった。


「もぉ……やめてよっ!」


あたしは渾身の力を振り絞って、両手で彼の体を押した。

すると意外にも彼はよろめいて数歩後ろへ下がった。


――今だ。

あたしは急いでその場から逃れた。



さっきまでいたテーブルに戻ると、ちょうど沙耶がトイレから帰ってきたようだった。


あたしは財布からお金を取り出して、沙耶に渡す。


「ごめん。もう先帰るね。優一君にも伝えといて」


「えっ? ちょ……萌香? どうしたの?」


驚く沙耶の声を背後に聞きながら、コートに袖を通す。


「なんでもない。沙耶は楽しんで」


あたしはそう言うと、急いでテーブルから離れた。


早くこの場所から離れたい……。

できる限り急いで店の出口に向かう。

もうヤダ……ヤダ……。

脚はまだガクガクと震えている。

もっと早く歩きたいのに、足がもつれてうまく歩けない。


今にも零れそうな涙を懸命に堪えて、ドアの取っ手に手を掛けた。



「萌香チャン!」


背後から呼ばれたその声にあたしは振り返った。