不機嫌でかつスイートなカラダ

「な……に……?」


「萌香チャンてオレのタイプなんだよねぇ」


彼は顔をあたしに近づけると、両手を壁について、あたしの体を囲んでしまった。


ヤダ……。

こういうタイプって苦手。

あたしはなんとか懸命に彼から逃れようとするものの、背後の壁によってそれ以上後ろに下がることができない。


そしてあたしの体はビクンと震えた。

彼の手があたしの髪に触れたからだ。


「ねぇ……この色……地毛? 柔らかいね……」


あたしの髪を一束手にとって指に絡ませる。

髪の一本一本に神経が通ってるんじゃないかって錯覚するぐらい、そこから全身に信号が送られる。

悪寒が走って、背筋がぞくりとする。


「やだ……やめてよぉ……」



もう触れ合うぐらいに近づいていた彼の体や口から、鼻につくほどのお酒の匂いがする。

さっきは気づかなかったけど良く見れば顔も首も真っ赤だ。

まだ始まったばかりなのに、いったいどれぐらいお酒を飲んだんだろう……。


「ねぇ、飲みすぎだよ」


そう言うあたしを無視して、彼はさらに体をあたしに密着させてきた。

耳元で囁く彼の息があたしにかかる。


「なぁ、ここ抜けて……二人で、いいことしよ……」