不機嫌でかつスイートなカラダ

何かと思ってテーブルの下を覗き込んだあたしの体は固まった。

さっき話しかけてきた隣の男の子の手があたしの膝の上に置かれていたからだ。

あたしの反応に気づいたのか、彼は一瞬こちらを見てニヤリと微笑むと、またそっぽを向いて、みんなと楽しそうに会話している。

だけどテーブルの下ではもそもそと彼の手が動いている。

みんなそれぞれ盛り上がっていて、誰もこの状況に気づいていない。

あたしの体はガクガクと震え出す。


助けを求めようとキョロキョロと視線を動かしても、そこには沙耶の姿もなかった。

きっとトイレにでも行ってるんだと思う。

――どうしよう……。


彼の手の動きはどんどんエスカレートする。

スカートを少しずつ捲り上げられる。


「や……」


やがて彼の指先が脚に直に触れそうになった瞬間、あたしは勢い良く立ち上がった。


みんなが驚いたような顔であたしを見る。


「トイレ行ってくる……」


あたしは鞄を手に持って、テーブルを離れた。

まだ脚がガクガクしてる……。

トイレに行けば、きっと沙耶がいるはず。


そう思って廊下の突き当たりの角を曲がった瞬間……


「どこ行くの……?」


突然かけられた背後からの声に、あたしは体をビクンと震わせて立ち止まった。


振り返るとそこに立っていたのは、さっきまで隣に座っていた男の子。


あたしを見下ろしてニヤニヤ笑っている。


「どこって……トイレ」


「トイレなら逆だよ?」


「へ?」


あたしは自分が向かおうとしていた先にある扉に目を向ける。

そこには【STAFF ONLY】の文字。

どうやらこの先は従業員用の事務所のようだ。


トイレはこっちじゃなかったのか。

「ありがと……」

そう言って、元来た道を戻ろうとした瞬間、彼に腕を掴まれて、あたしの体は壁に押し付けられていた。


「きゃっ」