「あの~。橋本優一さんはおられますか?」
お店の人があたし達に声をかける。
「はい。オレですけど?」
「お電話はいってます。こちらまで来て出てもらえますか?」
このお店は地下にあるから携帯が通じない。
だからわざわざお店まで、誰かが連絡を入れたんだろうな。
「萌香チャン、話の途中でごめんね。また後で話そう……」
そう言うと、優一君は席を立ってあたしから離れてしまった。
一人残されたあたしは、手にしていたワインを口にした。
――とその瞬間。
「……卓巳は?」
少し離れた位置にいる男の子達の方から卓巳君の名前が出てきて、思わずむせそうになる。
グラスを持つ手が震える……。
頭はダメだ……って命令するのに。
あたしの耳はそこに全神経を集中させて彼らの話の内容を拾おうとする。
「卓巳……今日……王子だってさ」
「和美と一緒だろ?」
「そうそう。なんだかんだであいつ、姫には弱いもんなぁ」
――なんだ。
そういうことか。
王子様とお姫様。
友達の間ではそんな風に言われているカップルなんだろうな。
ほんとにお似合いで絵になる二人だもん。
そう納得して、あたしはまたグラスを口につけようとした。
「ねぇねぇ、ここいい?」
いつの間に近づいていたんだろう。
あたしの隣の席を指差して、男の子が一人立っていた。
お店の人があたし達に声をかける。
「はい。オレですけど?」
「お電話はいってます。こちらまで来て出てもらえますか?」
このお店は地下にあるから携帯が通じない。
だからわざわざお店まで、誰かが連絡を入れたんだろうな。
「萌香チャン、話の途中でごめんね。また後で話そう……」
そう言うと、優一君は席を立ってあたしから離れてしまった。
一人残されたあたしは、手にしていたワインを口にした。
――とその瞬間。
「……卓巳は?」
少し離れた位置にいる男の子達の方から卓巳君の名前が出てきて、思わずむせそうになる。
グラスを持つ手が震える……。
頭はダメだ……って命令するのに。
あたしの耳はそこに全神経を集中させて彼らの話の内容を拾おうとする。
「卓巳……今日……王子だってさ」
「和美と一緒だろ?」
「そうそう。なんだかんだであいつ、姫には弱いもんなぁ」
――なんだ。
そういうことか。
王子様とお姫様。
友達の間ではそんな風に言われているカップルなんだろうな。
ほんとにお似合いで絵になる二人だもん。
そう納得して、あたしはまたグラスを口につけようとした。
「ねぇねぇ、ここいい?」
いつの間に近づいていたんだろう。
あたしの隣の席を指差して、男の子が一人立っていた。

