「……萌香チャン? 話聞いてる?」


「え? あ……ごめんなさい」


ぼんやりしていたあたしは、優一君の声で顔を上げた。

夜になって、あたしは優一君主催の合コンに参加していた。

あたしの隣に座っている優一君は一瞬呆れたようにふぅとため息をついて、煙草を持つ手で眉のあたりをポリポリと掻いている。


「なんかさっきからずっと心ここにあらずって感じだけど……。楽しめてないんじゃない?」


「そ、そんなことないよ!」


あたしは慌ててワインの入ったグラスに手を伸ばした。


なんてウソ。

ほんとはさっきから楽しいなんて感情はどこにもなかった。

少しでも気が紛れるかと思って来てみたものの、正直もう、合コンなんてどうでも良かった。


卓巳君に会うために気合を入れてオシャレしたのとは大違い。

服装も髪型もアクセサリーもどうでも良かった。

首筋のキスマークを隠すために、タートルのニットを選んだ。

ただそれだけ。


「あのさぁ……」


優一君が煙草を灰皿に押しつけながら口を開く。


「あいつ……なんも言ってくれないでしょ?」


「え?」