家に着いたあたしは、バスルームへ直行した。


レバーを勢いよく上げて、頭から熱いシャワーを浴びた。


「……ック……」


水音に混じって響くあたしの嗚咽。



やっと思いっきり泣けた……。

家に着くまでずっと我慢してたから。

張り詰めていた感情の糸がプツンと切れたのか、あたしは子供みたいに声を上げて泣きじゃくった。

胸が痙攣を起こしたみたいに、ヒクヒクと上下する。


卓巳君……。

卓巳君……。


自分で決めたことなのに、もう後悔してる。

別れてからまだ一時間も経っていないのに……

それなのに……もう卓巳君が恋しくなってる。



顔を上げて目の前の鏡に映った自分の体を眺める。


胸や首筋につけられた卓巳君の紅い印を指でなぞる。


どうして……?

いつもはキスマークなんてつけないのに、どうして今日に限ってこんなもの残したんだろう……。

いつもとは違う卓巳君の強引で荒い仕草を思い出して……

体の奥のずっと深い部分が疼きだす。


ずるいよ。

こんな跡をあたしの体に刻み付けるように残して……。


これからしばらく、あたしはきっと鏡を見るたび思い出すんだ。


早く忘れたいのに。

この印も早く消えて欲しい……。


――なんてウソ。

消えないで。

ずっと残ってて欲しい。

卓巳君があたしを抱いた証……。


どうか消えないで……。