誕プレ…

どうしよう。

俊也いつもマフラーしてないから、マフラーにしようかな?

手袋の方が良いかな?

「何独り言言ってるの?」

「え?俊也?」

「何か俺にくれるの?」

「え?」

「何でも良いよ。そう言えば、俺…香に誕プレあげてねーよ。香の誕生日、俺ら別れてた…。」

俊也の声はだんだん小さくなって、俊也は元気がなくなっていた。

「良いよ。私の誕生日なんて。気にしないでよ。」

「良くねーよ…。」

「俊也は悪くない。私が別れたいって言い出したんだから、私が悪いんだもん。」

「俺、香の誕生日祝ってやりたかったよ…。」

「俊也、嬉しいよ?じゃあ来年楽しみにしてる。」

「おう!」

「今年は俊也の誕生日を祝おうね。」

「悪いな。」

私は散々悩んだ挙げ句、俊也にマフラーを編んだ。

一生懸命、俊也の事を想って編んだ。

おかしくなる度に、何度も何度も解いては編んで…

日付が変わり、俊也の誕生日の日の深夜、ようやく完成した。

良かった、出来た、間に合った。

俊也、喜んでくれるかな?

俊也、気に入ってくれるかな?

喜んでくれると良いな…。

私は俊也の学校に行き、俊也を待っていた。

この日、保善高校の校門には女の子がたくさんいた。

皆、彼氏を待ってるのかな?

何かあるのかな?

あ、俊也が出て来た。

「俊…也…」

俊也を呼ぼうとしたけど、私の声は打ち消された。

私は俊也の所に行くにも行けない状態だった。

俊也の周りには女の子達が集まっていた。

年上から年下まで、パッと見ても20人はいた。

俊也は囲まれていて、私は俊也の所に行けなかった。

「矢吹くん、今日誕生日でしょ?これ、私からの誕プレ!」

「矢吹さん、これ良かったら貰って下さい!」

「矢吹さん、私のも貰って下さい!」

「矢吹くん、私のも貰ってよ!」

「矢吹くん、私も持ってきたよー」

その時だった。

あの人の声がした。

「俊也!」

「あ、百合子!」

ゆ り こ?

誰?

誰?

ゆりこって…。

しかも、俊也って呼んだ?

私の聞き違い?

聞き違いだよね?

「俊也、今日誕生日でしょ?これ、誕プレ!」

「おお!サンキュー」

何?

俊也の何なの?

何で、そんなに親し気なの?

あの里加ちゃんだって、矢吹くんって呼んでたのに…