やっぱり私は俊也に相応しくない。

私と俊也は違う。

私が俊也と一緒にいてはいけないんだ。

俊也が本当に掴むはずの幸せを私が邪魔してる様な気がする。

俊也を自由にしてあげよう。

私が離れる事で、俊也を幸せにしてあげよう。

私は俊也にまたこの言葉を言った。

「別れよ?」

「何で?他に好きな奴でも出来た?」

俊也は凄く悲しい顔をして私を見た。

そんな人いないよ。

俊也が大好き。

でも、私は俊也に嘘をついた。

俊也に幸せになって欲しかったから…

俊也が大好きだったから…

俊也が私を幸せにしてくれたから、俊也にも幸せになって欲しい。

「そう。そうなの。好きな人が出来た。ごめん。」

「いつから?」

「いつ?いつからだろう…気付いたら好きになってたかな。」

「そっか。分かった。分かったよ。そいつと上手くいくと良いな。」

俊也は去って行った。

これで良い。

これで良いんだ。

私じゃ俊也を幸せになんて出来ない。

私は俊也が想ってる様な人じゃない。

優しくて強い人間じゃない。

何一つ取り柄もない。

私といても俊也は幸せじゃないよ。

何も良い事ないよ。

お願い…

良い子を見付けて!

俊也を幸せに出来る様な私と正反対な子を…

俊也、幸せになって!

私は今まで十分幸せだった。

もう十分だよ。

これ以上、俊也の傍にはいられない…。

噂はどうしてすぐに広まるのだろう?

葉子ちゃん、あっこ、伊藤くん、田川くん…

皆から

「好きな人出来たって本当?」

と聞かれた。

そして、留めは

「本当に好きな人出来たの?」

と聞かれた。

何も聞かないで欲しかった。

つい、うっかり

「好きな人なんて嘘に決まってるじゃん。」
と言いたくなる。

田川くんに俊也が元気がないとか、どうにかしてやってくれとか言われる度に、気持ちが揺れた。

誰かに本当の事を知っていて欲しかった。

本当は俊也を好きだという事を…。

俊也を好きだという事実を消したくなかった。

誰でも良い。

誰でも良いから、誰かには私の好きな人は俊也だという真実を…。

そうでないと、俊也との思い出までが消えてなくなりそうで怖かった。

けれど、どうする事も出来ない。

私は俊也を好きではないと私自身がしたのだから…。

もうしょうがない。