「え?どうして、急にそんな事聞くの?」

「気になったからかな。」

「私の好きな人…。」

「え?矢田、今好きな人いたの?」

「す、好きな人位いるよ!」

ムキになってしまった。

「伊藤以来、好きな人なんていねーと思ってたよ。マジで?どんな人?」

「私には手の届かない人…」

「何だよ、それ!どんな人だよ?」

俊也は笑っていた。

「私じゃダメなんだ。無理なの。」

「そんな事分かんねーじゃん!簡単に諦めるなよ!」

「じゃあ、まだ諦めないでおく!矢吹くんは?矢吹くんはモテるのに、どうして彼女作らないの?」

「俺、ずっと好きな子がいるんだ。」

「好きな子?」

「うん。」

私の目を見て言った。

吸い込まれそうだった。

「どんな子なの?矢吹くんが好きになる子って…可愛い子?」

「可愛い子だよ。マジで可愛い…そんで、優しくて、強い子!」

俊也は、廊下から見える外の景色を見ながら、凄く自然にそう言った。

嬉しそうだった。

可愛い子なんだ…

しかも、マジで可愛いんだ…

優しくて強い…

私とは正反対の子…

誰なんだろう?

「矢吹くん、誰?」

私は知りたかった。

俊也の好きな子に少しでも、近付きたかったから…

髪が短いなら、この伸ばしてる長い髪も切っても良い。

出来る限り、矢吹くんの好きな子に近付きたい…。

「え?」

俊也は驚いていた。

顔を真っ赤にして、焦っていた。

「な、何だよ!いきなり!びっくりするなー。矢田こそ、誰だよ?」

「私は、言えない。言ったら、その人に迷惑だから。」

「じゃあ、俺も言わない。」

俊也は笑っていた。

「けど、手の届かない人ってどういう事だよ?まだ、伊藤の事好きなの?」

「それはないよ。別の人…」

「矢田って、結構肉食だろ?」

「え?私が肉食?草食だよ、私…」

「伊藤の時、すげぇ伊藤と話してたじゃん!矢田は伊藤が好きだってすぐ分かった!素直だな、矢田って…」

「矢吹くん、それね…違うの。」

「え?違うって?」

「好きな人でも、話せる人と話せない人がいるの。今の人は、好きになってはいけない人だったから…。」

「じゃあ何?そいつには話し掛けれねーの?」

「うん。恥ずかしくて、顔すら見る事が出来ないの。上手く話せないの。話し掛けるなんて到底無理な話だよ。」