本当に良い人だったら、あんな嫌なグループにいれないよ。

抜けてるはずだよ。

結局は、自分が良い思いをする為に権力を選んだって事でしょ?

こんな人、大っ嫌い!

そんなに良い人じゃないよ…。

仮に違っていたとしても、七海ちゃんは全部が揃っているから、人にも優しくなれるんだよ。

余裕があるだけの話だよ。

例え、私が同じ事をしたとしても、私は七海ちゃんの様には褒められない。

当たり前だと思われるだけ。

ずるいよ。

七海ちゃんばかり、良い思いして…。

こんな風に、思う自分は嫌だよ。

私は七海ちゃんに対してひがんでるの?

本当の自分はこんなんじゃない。

こんなんじゃないよ。

こんな醜い性格じゃない。

周囲が悪過ぎるから、自分が駄目になるんだ。

私の性格も悪くなっちゃうんだ。

逆に言えば、もっとまともな子が多かったら、七海ちゃんだって、全然大した事ないよ。

大した事ないんだから…。

込み上げてきた物が一気に爆発した。

そして、涙が溢れ出した。

クラス中がざわついた。

「矢田が泣いてるよ!」

あっこが

「香、香、どうしたの?何言われた?」

と心配して声をかけてきた。

俊也も遠くから私を見ていた。

そして、こっちに来て

「矢田、矢田どうした?大丈夫か?何かあったのか?ちょっと休憩しろよ。な?」

と泣いてる私の顔を覗き込み、心配そうに言ってくれた。

矢吹くん、お願いだから、こんな醜い私を見ないで…。

私には矢吹くんが、眩し過ぎるよ…。

そして次の日から、アルトの猛練習が始まった。

当分の間、ソプラノとアルトは別れて、練習をする事になった。

徐々にソプラノの子も練習に参加する様になった。

大変な騒動の末、クラス全体で練習を何日か重ね、本番を迎えた。

私達のクラスは、また賞が貰えなかった。

賞と言っても、五クラスの内、三クラスは貰える賞だから、貰えない確率の方が少ないのだけど、貰えなかった。

やっぱり、仲の悪さが観客にも伝わったのだと思った。

色々なトラブルがあった中学校生活の全ての行事が終わった。

やっと終わった。

これで淡々と受験勉強に勤しんで、後は里加ちゃんに目を付けられない様に、大人しく、控えめに過ごして、無事に卒業出来れば良い。

それで良い。

後は何も望まない。