私は泣きそうになった。

涙が溢れ出そうだった。

俊也に後一言何か言われていたら、もう涙を止めることが出来ない位泣いていたかもしれない。

何か言わなきゃいけなかったけど、泣くのを堪えるのが精一杯で、暫く何も言えなかった。

そして、ようやく俊也に「矢吹くん、ありがとう。私のことそんな風に言ってくれて。」と言えた。

そして「違うんだよ。私ただ本心で人と関わるのが怖いし、めんどくさいんだ。」と言った。

「俺も、そうなんだけどさ」

「矢吹くんもそうなの?」

「分かんない」

二人で笑い合った。

「矢田、そういう顔して、いつも笑ってろよ。俺、矢田の笑った顔、結構好きなんだ」

「え?」

私は一瞬ドキっとした。

何を言われたのか分からなくなって、呆然としてしまった。

うるさかったのか、見回りの先生がやって来た。

「やべぇ、矢田早くこっち」

俊也に腕を捕まれて、柱の後ろに素早く隠れた。

ドキドキしながら、先生にみつからない事を祈った。

気付いたら、私は俊也に抱き寄せられていた。

暫く、そのままの状態だった。

俊也の体温や息を感じていた。

「もう、先生行ったかな?」

「あ、矢田、ごめん。ごめんな。」

俊也は私を放した。

そして、今度は強く私を抱きしめた。

「本当に無理するなよ。我慢しなくて良いから。」

そう言い残して、走って行った。

俊也の顔が真っ赤だったのが、遠くからでもはっきり見えた。

何だかドキドキした。

信じられない事が起こった。

私の心臓の音、矢吹くんに聞こえてたかな?

何で、私の事あんなに分かるんだろ?

私の事を好きでいてくれてるの?

こんな私を?

まさか…

矢吹くんに限って、そんな事あるはずがない。

あるはずないよ。

けど、あっこ達もそんな風に言ってた。

本当なの?

まさか…

不思議な気持ちになった。

けど、私の事あんな風に言ってくれて嬉しかった。

部屋に戻ってもドキドキして眠れなかった。

結局、その晩、私は一睡も眠れなかった。

俊也との事が頭から離れなかった。