「ここが5になるのだから、Xは…じゃあ、西田。」
「…。」
「おい、起きろ。西田っ!」
「っ、は、はい。何ですか?!」
先生の怒鳴り声で目が覚めた。
「何ですかじゃないだろ。ほら、ここの①、答えろ。」
「えっと…8かな?」
慌ててシャーペンを握り答える。
「全然違うぞ。この後、職員室に来なさい。」
「はい…。」

いつものことだ。
授業中に寝て、先生に呼び出されて怒られる。
高校に入ってこれで5回目。
重いまぶたこすりながら、職員室へ向かう。

西田里香(にしだ りか)、F高1年。
中学の時から陸上一筋だった。
走るのが大好きで、勉強は大嫌い。
よく居眠りをするが、いつも明るく笑顔なのが取り柄。
成績もそれなりに良い。
家族は、父親と母親と
できの悪い妹の有香(ゆか)。
とにかく、里香は誰からも好かれていて、