さっきまで、がっちりと抱きしめられていた腕が解かれた。ふっと一瞬、体が宙にでも浮いたかのように安心感に包まれた。




「・・・私じゃない・・・でしょう?」




騎士が本当にキスしたい相手は・・・私じゃない。



それを知っているから...分かってるから......




揺れている騎士の瞳。


黒い闇が少しだけ柔らかくなっている。キミの瞳をそうしたのは・・・私。




「何で・・・キスしたの?何で・・・・抱きしめたの?・・・・何で優しくするの?・・何で・・・傍にいるの?・・・何で騎士と私は・・・・幼なじみなの?」



溢れ出てしまった言葉の渦


言うまいと思っていた言葉がすべて吐きだされてしまった。嗚咽と一緒に出た、すべての疑問が一番聞かれたくない相手の前で出てしまった。




ぎゅっと唇を噛み締め、帰って。と告げた。



たった一言の、この言葉に込めた私の想い





キミは・・・気付いてないよね――――?




騎士は何も言わず、さっと立ちあがり重たい足取りで部屋を後にした。玄関の方から、ガチャン..という大きな音と共に悲しい風が私に吹き付けた。





....分かんない。


.....怖いんだよ、騎士




分かっちゃったら・・・・止まらないから.....



私が抱く....キミへの想い



ずっと秘めてきた、自分自身にも隠してきた・・・・この想いが.....