早紀は




手を赤井に握られたままだった。




このままでいいかな




と思ったけど、




恥ずかしい気がした。





こいつに悟られたくない。






「ちょつと」





早紀は赤井の手を




振り払った。




「いきなり



 何するのよ」




その時だった。





後ろで大きな音がした。




早紀は振り向いた。



さっきわたった交差点の歩道に



乗用車が突っ込んでいた。



辺りは騒然としてきた。





間もなく、



救急車の音が遠くから響いてきた。





早紀はその光景を呆然と眺めていた。






「なあ、





 遅刻するぞ」




と、赤井が言った。



その声で早紀は


日常に戻った。