ふわりと、僕の胸に飛び込んできた悠月。


「ゆ…づき…?」


「和之っ…
私っ…どぉしよっ…
お母さん…死んじゃったら…
どぉしよっ…!」


子供みたい…だよな…

悠月、ホント。

少女らしさって…

やっぱ、持ってなきゃダメだよ。

じゃないと…

こぉいうときに…思いきり泣けないから。


とりあえず、看護師さんなどが忙しく往き来する廊下で泣かせるわけにはいかない。


近くに、小部屋を発見。


テレビが1台と、大量の漫画本が。


ここなら…テレビをつければ、
悠月を思いきり泣かせられる。


ぎゅ…


「いいんだよ…
悠月…
泣きたいときは、思いきり泣けばいいんだよ。
僕の胸でね?
流した涙の分だけ、明日は笑顔でいればいい。
…でしょ?」


「でも…」


「でも、じゃないの。
悠月…お前は俺の言うことだけ聞いてろ?」


低い声を使って耳元でそぉ言うと、


「おかあさっ…ふぇっ…」


それ以来、1時間くらい、悠月は僕の胸で泣いてた。
Yシャツの胸元辺りが悠月の涙で濡れているのが、何よりの証拠。


テレビは、悠月が泣いた頃にやっていた野球中継ではなく、
ニュース番組になっていた。


テレビを消して、休憩室を出ると、
目の前に1人の先生が立っていた。


顔立ちは良いのだが、髪型がパーマがかかりすぎていて、
化学実験に失敗して薬品を爆発させた後のような髪型をしていた。

その先生に、
「ご親族の方ですか?」

と聞かれた。


親族は悠月だが、泣いた後で疲れて眠っているため、代わりに僕が話を聞くことにした。