〈奈留side〉

由起子先輩に携帯電話を返す。


「何…したの?…奈留…」


「秘密です♪」


その…数十分後。


バタバタっ…


「病院内では走り回らないでくだっ…
あぁ!!
宗太っ…
加奈が今…」


「知ってます…」

皆が驚きの眼差しを、宗太くんとやらに向ける。


私のほうを見て、そう言った彼は、スタッフさんに案内されながら、加奈先輩のいる手術室に向かった。


「奈留…すげぇよ…」

あっけにとられる雅志先輩をはじめとした動物病院スタッフたち。


「ごめんなさいっ…」

「私も…ごめんなさいっ…」
私をいじめていた先輩たちが、雅志先輩からかなり離れたところに連れ出して、すぐさま謝ってくれた。


「うらやましかったの…
私たち皆…雅志先輩と仲良くしてる奈留が…」

「だけど私…先輩にフラれちゃったから…私じゃ…ダメなんだって思った。
…先輩は…奈留じゃなきゃダメなんだと思う。」

遥香先輩の告白に、少しビックリした。


「私…気にしてないですから大丈夫です!
…私も、1つ1つの仕事を自信を持ってこなせないとこも原因の1つなのかな
って思いますし…」


「ううん…
そんなことない。
…それに…1年目とは思えないくらい、仕事には一生懸命だしね?
私なんて…ウサギの水替えみたいなことやるんだってずっと思ってて…何回も無断欠勤したんだから。」


「だけどね奈留。
…カッコ良かったよ。
さっき、私たちがアタフタしてる横でいろいろと指示している姿。」


「由起子先輩~!!」

気付けば、頬に涙の筋が出来ていた。