「すみません…社長室のほうにはプロデューサーの僕が案内しますので…
悠月、もう仕事に戻れ。」

背後から、いつの間にいたのか、ファイルを抱えたプロデューサーがいた。

プロデューサーに歩み寄る間際、僕とすれ違った男は、いかにも"遊び人"な顔立ちをしていた。


「お前、営業先の社員に手を出すとは…何様のつもりだよ。」


「何もわかんなくて当然かな。
悠月は俺の元カノ。」


「なっ…」


「では、悠月と仲良くしてやって下さい。」


そう言ってからプロデューサーの元にまっすぐ歩いていく男に鋭い目を向けていた。

悠月をふと見ると、ブラウスのボタンは下着が見えそうなくらい開けられていて、首筋には赤い痕がくっきりと残っていた。

僕は泣きそうになっている悠月の肩を抱いて、どこか落ち着く場所へと連れていった。

誰もいない部屋が会議室しかなかったため、そこに入る。


「和之っ…
私…ここ入れば…祐希に会わないと思ったのにっ…」

そう言ったきり、悠月は僕に抱きついて声を上げて泣いた。

僕には彼女を、泣き止むまでそっと抱き締めることしか…できなかった。


2時間くらい経ったのだろうか。
ようやく泣き止んだらしい悠月を、洗面所に向かわせた。


「落ち着いた?
…顔洗って来ちゃいな。
せっかくの可愛い顔が台無し。」

またそんなこと言って~

って、悠月には思われるのかな。

だけど…泣いてる悠月は見たくないし、
僕自身…あんな乱れた姿で抱きつかれたら…理性持ちそうになかったから…