「あの…和之さんも…
なんで私なんかに…優しくしてくれるんですか?
…敵同士なのに。」


「ほっとけないんですよ。 素直になれないところが誰かさんに似てて。
その人に頼まれたことも一理ありますけどね。」


「和之っ!!
さりげなくそんなこと言わないでよ…」


「ホント、和之さん、悠月さんのこと大好きですね。微笑ましいです。」


「一緒…だと思うんです。 僕は悠月への愛を詞にしましたけど、
春香さんは母への愛を詞にした…
その対象が違うだけで、根底にある愛のカタチは同じなんじゃないかって。」


「さすが和之。
いいこと言うじゃん?」


そんな話をしているうちに病院に到着。


僕を見つけたからか、小児科医、谷川が手を振っている。


「わざわざありがとう。
先にこの人たち、案内しておいて。

…あ、コイツ、僕の女だから。
手ぇ、出したら承知しないから。」


「相変わらずだな、分かってるよ。」


駐車場に車を停めて、病院内に。


「…悠月。」


「静かに。」


「ところで…なんで病室にピアノ?」


「春香のお母さん、ピアノの先生だったからね。
ピアノがあったほうが落ち着くんだって。」


「春香。
久しぶりに…ピアノ…聴かせてくれるか?」


ピアノの前に座って、一呼吸置いてから弾き始める。

さきほど作詞作曲をした曲だろうか。


母親への感謝の気持ちが詰まった曲だ。