会社に戻ると、悠月がいそいそと鞄に荷物を詰めていた。

「あ…帰るの?」

「うん。
…気分転換に、実家に顔出すの。」

「ふうん。
清々するわ。
悠月とご飯食べなくて済むし。
酒癖悪いからな~。
ま、気を付けて。」


「…私も清々する。
和之のことなんて…大嫌いだし!」

悠月はそう言って、目にいっぱい涙を溜めながら、会社を出ていった。

不謹慎だけど、その涙に…僕の胸が高鳴った。


その後、プロデューサーにプログラミングをチェックしてもらう作業を終え、そのまま食事に行った。

「さすが、三ノ宮は仕事はデキるな。
恋愛は不器用だが。」

「プロデューサー…?
僕は一応、色んな女とそれなりに付き合って経験も豊富…」

「…本命以外、だろ?
悠月ちゃんにあんなこと言って…
思ったことと反対のこと言って妬かせようって思ったって…ああいう子には逆効果なの。」

「…そう…ですよね。」

「あーいうタイプは、素直に励ましてあげたり、褒めてあげたりすると…多分…大丈夫なんだろうな。
と、俺は思う。」

「そう…してみます。」

「まあ…大変だぞ。
彼女…普段あんなに明るいだろ?
あーいう明るさは逆に、心の闇を隠してくれるからな。」

「心の…闇?」

そのときは特に…気にも留めなかったけど、後々…分かることになるんだ…

悠月は結構…いろいろなものを…
抱えていたんだって。


和之side〈終〉

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