思わず、下を向いていた顔を上げる。


藤沢は切な気に眉を寄せた。


眼鏡のフレームが、外の光に当たって

アイツの目を隠す。



「…でもアンタはいつだって、オレから離れられる。
アンタが嫌だと望んだら、話すことだってないし、教室で勉強を教えることもない」


また、ついこの間の学校生活に戻るって事だ。

藤沢は相変わらず学年1位の秀才で、
無表情で無口なクラスメートの存在に。

そして、私のようなバカとは喋らない

接点のないこの前に。

図書室で会っても気付かないくらい。


「オレがいくらそれを望まなくても」


さっきぶつけてしまった理不尽な言い分が

後悔に変わる。


「黙ってたのは、アンタが泣くと思ったから」


何で、あんな事言ったんだろう。

いくら衝動的でも

私はひどい事を言い過ぎた。


『哀れんでたんだ?』

どうしてあんな事

冗談でも言えない。



「又、あの男しか見えなくなるアンタを

見たくなかったから」


それは藤沢の優しさ。
分かっていたのに。



「押し付けて、悪かった」


アンタは、悪くないのに――。



私の勝手な我が儘に、藤沢を振り回して


傷つけた。