二人の影が、遠のいて行く。




公太郎はちっとも私に気付かなかった。




あの子だけを見ていた。




ああ。そっか…。



「好きな子…いたんだ」



私は誰に言うでもなく呟いた。



…そっか。




私はふらっとした足で地面を踏む。



だから、あんな事言ったんだね。


―――人影もなく、薄暗い体育館裏。



公太郎はジッと黙ってそこへ現れる私を待っていた。



いつもは「よっ」ておちゃらけて笑うくせに。



あの時だけは、何も言わないで真剣な顔のままだった。




あの時から、もう公太郎は終わりにしようと思ってた?



もう、公太郎の中に私はいなかったの?



あの子を、好きになっていた?




「…っ」




鼻の奥がツンとする。

あの不快な感じが私を襲う。




…もう終わりなんだね。




「天宮」


肩を力強い手で掴まれ、行き場を制された。



「天宮」と、また呼ばれた。



この肩に乗る手は藤沢だ。




「天宮、こっち向け」



ねぇ、藤沢。



アンタさ、もしかして――




「知ってた…?」



アイツの指先がピクッと動く。




…分かってた?