視界がぼんやりする。
足元もなんだかぼやけて見える。

どうしよう。泣きそう…。


カタカタと震える拳がピタリと止まる。



「なつみ」



私は手を握られた。


片方の手が、藤沢の手によって優しく握られていた。


見上げると藤沢の顔があって…


「行くぞ」

さっきの5人の女子の間を縫うように進んだ。

私は呆然として、引きずられるように下駄箱を後にした。


藤…沢?

昇降口を出ても、手は離されない。

校門に向かい、黙々と歩く。


真剣な顔してる。


それに…さっき…



「ふっ…藤沢…」



足は止まらない。


だから私も数歩ほど遅れながら早足でついて行く。


「藤沢…っ」


「…」


返事の変わりに力強く握り締められる。

私はたまらなくなって踏ん張った。


「藤沢!!」

引きずっていた側の藤沢が、逆に引っ張られる形になる。

眼鏡が反射してるのか
私の目がぼやけてるからか

藤沢の目は見えない。

だから、どんな目をして私を見返してるのか分からなかった。


ただ、握られた手はやけに温かかった。