「好きな奴に本気では斬りかかれないだろ。」


「な!?

す、好き!?」


「ああ。

そもそも、結婚式も一応やっただろ。」

「そ、そうだ。

何も、おかしいことはない。」


「だろ?」


「しかし、本気を出してくれなければ練習の意味がないな。」


「って言われてもな。」

「そうだな、では、こういうのはどうだ?


幸大が勝てば私を好きにしていい。」


「好きに!?

マジで?


今までしてくれなかったことも!?


それは夜まで有効か!?」


「…なぜ、私はこんな変態を選んだんだ?」


「…で、お前の条件は?」


「私の条件は変わらぬ。

私が勝ったら、お前にキスをする。」


「毎回思うが、どっちにしろ俺は嬉しい展開。」

「練習に付き合ってもらっているからな。


それに、私も、悪くはないと思っている。」


「じゃあ、行くぜ!


千変万化。」





激しい攻防



そして、



ツルッ、


「あ!?

やばっ!」

幸大が地面の窪みに溜まった水を踏み足を滑らせた。


ダンッ、



「ま、参った。」


ネネが幸大に馬乗りの態勢で乗っかる。


「はぁ、はぁ、勝った。


私の勝ちだな。」


「ああ。

本気を出して、それでも俺はお前に勝てなかった。

情けねぇな。

好きな女よりも弱いなんてな。」


「幸大、それでも良い。


これからも私と共にいて、

私をいつも守ってくれ。」


「ああ。

当然だ。

任せてくれ、お姫様。」


「…馬鹿が。」


こうして幸大は初めてネネから勝者のキスをもらった。