「なぁ、もし、王女様が助かったら、王女様、あんたの耳、触って良いか?」


「貴様は馬鹿か?


よかろう。

妾の耳で命が助かるとでも言うならば、思う存分触らせてやろう。」

「約束だ。」



兵士が動き出した。

「死ね!

ヒミコ!」


ガキィンッ、


幸大が剣で受け止める。


「くっ!」

「悪いな。

この千変万化の剣。

初めての人斬りはお前たちだ。」


「何だと!?

かかれ!」


「王女様、イヨ、あんたらは双剣の男を探してたんだっけ?


いくぞ、千変万化!」


ヒュンッ、

幸大が走り出す。

それは走ると言うよりも流れるという言葉に近かった。


ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ……


人を斬る音が続き、そして止む。

ドシャッ、

先ほどまで立っていた兵士は全てその場に倒れ、死んでいた。


その死体のそばに立つ幸大の姿があった。


その手には、

「…双剣?」

イヨが呟く。

「この千変万化の剣は名前の通りいくつもの形を持つ。

俺が知らない形もある。


さらには、その形に応じた力を俺は得ることができる。

高速で動くことも。」


「では、貴様が勇者なのか?」