「幸大、此度の戦い、見事な戦法だった。

しかし、敵を逃がすとはどういうことだ?」


「王女様、あんたは何のために戦争してんだっけ?」

「我らを駆逐しようとする諸国を倒すことだ。」

「違うだろ。」

「何?」

「人間と亜人種の共存、だろ?」


「…、そう…だったな。」


「今回逃がしたのも、あいつは亜人種が嫌いで戦ってるようには見えなかった。

おそらく、誰かの命令だろ。

まぁ、敵の偉い奴らだろうけど。

でも、共存のための一歩になれるだろうと思った。

だから俺は逃がした。」


「…わかった。

貴様の言い分。

もっともだ。

今日はもう休め。

御苦労だった。」


幸大が謁見の間から出る。


「…妾は己の目指す道を誤るところだった。

妾は本当に正しいことをできてるのだろうか?」



「王女様。」

イヨが姿を見せる。


「盗み聞きして申し訳ありません。

ですが、王女様、迷わないでください。」

「迷うな、だと?」

「はい。

王女様はこの国の支え。

王女様が迷っていたら、我々は誰を信じれば良いのですか。」


「…イヨ。


しかし、妾が道を誤ってしまえば取り返しがつかぬ!」


「幸大さんは王女様の誤りを正しました。

王女様が迷うのを私は救おうとしています。」


「…。」

「国は一つですが、王女様は一人ではありません。


国を支える王女様を支えるために私も、幸大さんも、多くの兵士もいます。

王女様は私達とともに。」


「…イヨ、ありがとう。

お前も休んで良い。」

「では、失礼します。」