「お待たせ!」

10分ほどすると、恋人が戻ってきた。

「……血がついてるぞ」

彼の着ていたシャツには、
べっとりと赤黒い物が付着していた。
きっと、解体でも手伝ったんだろう。

「さっきも、汚しちゃってたし
 もうしょうがないよ。
 俺、食べ方下手だよねー」

そう笑う彼の口元に目をやると、
そういえば未だに少し
俺の食べこぼしがついたままだ。

車に乗る前に気づいていたけれど、
面倒なのでそのまま放っておいたんだ。


「まったく。
 もっとゆっくり食べればいいだろ?」

唇の端に舌を這わせる。


……まずい。


「美味しいからさ、
 つい、がっついちゃうんだよね」

彼はどうして、こんな物を
いつも美味しそうに口にするんだろうか。

……やっぱり違う種族なんだろうな。


「じゃあ、そろそろ行くか」

「うん。
 もう少し行けばモーテルがあるってさ」

少女に聞いたのだろう情報を出し、
車のエンジンをかけた。

いつまで続くかわからないけれど、
それなりの毎日だから、
このまま続いて欲しいと願う。

でもきっといつか、終わるんだろう。

それが幸せな結末でも、そうじゃなくても。