何で俺がなんだろう?
そうは思ったけれど、少年を慰めるのは
俺よりも彼が向いているからなのだろう。
見てきてくれれば、
もう商売はしていないし、
無料で給油させてくれるそうだから
それ位の気遣いはしよう。
……家の中は暗く、少々油臭い。
入口付近にライトを見つけたので
それを拝借して、部屋の中を照らした。
玄関から、向かって右の部屋まで
点々とした血痕がある。
この部屋の奥に、彼女は居るんだろうか?
ドアを開けると、
ムッとするようなカビ臭さと、
それに混じる鉄のにおい。
床を照らすと、黒い水たまりが見えた。
そのまま上に光をずらし……いた。
ベッドの上に小さな体が横たわっている。
予想したより綺麗なそれは、
しかし息を吹き返す事は、無いだろう。
――襲われた者の中には、
自身も変化を遂げる者もいる。
だけどそれは、肉体が腐り始める前だ。
数日経ってしまえば、もう可能性は無い。
少年がずっと、家の中を見つめていたのは
彼女がこの部屋から出てこないかと
きっと、待ち続けていたんだろう。
微かな希望を、さっき、捨てたんだ。