「それじゃあ、私、帰ります」 「おう。気を付けて帰れよ~」 先生は、やっと手をほどいた。 家に着いてからも、右手はなんだか温かいような気がした。 私は制服のポケットに手を入れた。 ......あった。 本当にあった。 先生からもらった、赤ペン。 それを握ったら、なぜだか涙が止まらなくなった。 なにも悲しくないはずなのに。