グビグビと一気に一缶空けて、ふーにゃんはにかっと笑って見せた
「ふぅ~。オレ、暇とビールさえありゃ幸せじゃわ」
「…彼女なんかいなくても?」
ふーにゃんの目を真っ直ぐに見つめながら、おれは言った。
ふーにゃんは良い暮らしをしている、
まなは病院で苦しんでるのに。
まなの大事なふーにゃんは、これっぽっちも苦しんでない。
…苦しんでない、なんてのは、良い部屋に住んでるふーにゃんへの勝手なひがみに過ぎなかったけど、今のおれは気付かない。
「女はおる。けどそれはまた別じゃ」
プシュッと2つめのビールに手をかけながら、ふーにゃんは言った。
「毎日がんばって働いとるから、この瞬間がある、そういうことじゃ」
一口コクンとのどを鳴らすふーにゃん。
缶をテーブルに置いて、言った。
「…で、お前何しにきたんな?」
おれは…『ふーにゃん』を一目見てみたかっただけだ。
そんなにイイ男なのかって。
「……小野田が、死ぬって分かって、別れたの?」
経済面だと完璧に負けてる気がして、
せめてふーにゃんの粗を探そうとしていた。
「…いや、知らんよ。お前とエレベーターで一緒になった日、あの日に初めて知った」
「小野田の前の会社の先輩がな、オレの知り合いなんよ。久しぶり会ったら、まるの話がでてなぁ…」

