その日、黙々と歩いて家に帰った。
自分の部屋に入り、ベッドにドサリと倒れこみ、天井を見上げる。
おれの心は晴れない。
どうしても『ふーにゃん』が気になってしょうがない。
人間ってなんて弱い生き物なんだろう、
自分が愛している人が、自分以外の人を愛してるかもしれないと思うだけで、
難病を抱えている彼女に憎しみさえ、覚える。
そんなにイイ男なのかよ、ふーにゃん、お前って。
「……あ」
ふと、思いついた。
テーブルに置いたまなの日記に手をのばす。
『……
ふーにゃんの家の近く、○○でご飯を食べた。ちょっとだけふーにゃんの家、青いマンションが見える ……』
おれはこの店を知ってる、ここに行けば、ふーにゃんの家も分かる。
会ってどうするかなんて、考えてなかったけど、
とにかくこの胸の、鈍い痛みをどうにかしたかった。
夕暮れの中、玄関を開け外に飛び出す。
自転車だとちょっと遠くて、途中までバスを使った。

