ざわり。 粘ついた声音が、全身に絡み付くようだった。 「僕の方が先に、好きになったのに」 一歩、間隔が詰められた。 その瞬間に巡の周りに風が円を巻き、砂埃が舞う。 遡羅は顔を覆い、消えて行く気配を感じたのか、恨めし気に吐き捨てた。 「殺してやる、殺してやる、殺してあげる」 最後に、遡羅の唇が紡いだ。 み こ と。 少女に告げられるにはあまりに残酷な言葉を。