雅の耳を塞ぐように、腕を回す。 けれどこの男の言葉は、間違いなく彼女に届くだろう。 巡への嫉妬と、みことへの愛憎にまみれた歪んだ声音は。 「好きなのに」 僕の方がと言って指をさされる。 笑っていたはずの遡羅の表情は変わり果て、感情が表に出ていた。 「こんな奴より、僕の方が君を好きなんだ。どうしてそれがわからないの? ずっとずっと、君だけを見てきたのは僕の方なのに」