ことりと目の前に置かれたケーキを見て、美味しそうだと頬を緩める。
その時、少しだけ背筋に冷たさを感じた。
ゆっくりと顔を上げると、先ほどと変わらない表情の遡羅がいる。

…どうしてだろう。まただ。

「いただきます。ほらほら、みことも」

「うん…」

フォークに手を伸ばして一口食べる。
しかし甘さや美味しさを感じたのは最初の一口だけだった。
残りは遡羅の視線が気になってしまい、全く味の感じないただの柔らかいものを食べているような感覚だった。